メンバー鼎談
「たま」と漫画・page 2
ガロ それから大人になって、「劇画」というか、大人向けの漫画なんかも読みました?
滝本 どういうやつ?
ガロ 「ゴルゴ13」とか。
滝本 ああ、「はぐれ雲」ぐらいかなぁ。
石川 俺結婚した時さぁ、お互い本持ちよったら「はぐれ雲」だけ二冊ずつあった(笑)。
ガロ それにしても昔は少女漫画、少年漫画、大人向け、というような分け方で大体分けられた漫画も、今はもう細分化されて凄いですね。一言にギャグといってもいろいろですしね。
石川 いわゆる、ちょっとシュールな感じなギャグ漫画っていうのが、メジャーで誰にでも読まれるようになっていった、というのはどういうキッカケなんでしょうねぇ。
ガロ それはやっぱり吉田戦車さんの「伝染るんです」は大きかったんじゃないでしょうか。
一同 ほほ〜お。
ガロ それ以前にももちろんありましたけど、いがらしみきおさんの初期の作品にはけっこうシュールなものも多かったですよ。でも、「伝染るんです」のようにああいうドメジャー誌で「不条理もの」みたいな4コマをあえてやったので、ガーッと一般的になったんじゃないですか。
滝本 相原コージもその頃だよね。
ガロ そうですね。でも相原さんの4コマは、それまでの4コマ漫画という枠内で相当面白かったですが、吉田さんの場合その枠さえ忘れさせたような感がありますね。
石川 いがらしみきおさんも相当シュールな事やってたけど、ポピュラリティを得たという点ではやっぱり吉田さんからだと思うな。いがらしさんの場合、当時「知る人ぞ知る」感があったじゃないですか。皆が受け入れている感じじゃなかった。
ガロ 「ぼのぼの」で大ブレイクするだいぶ前でしたしね。
石川 あと吉田さんの場合キャラクターが立つというかね、他の4コマに比べて。
ガロ そうですね。かわうそ君とかね。単行本が出るとあちこち仕掛けがしてあったし、色んな面で革命的でしたね。
石川 装幀が凝っててね。
ガロ わざと帯が斜めに切れてたり、乱丁っぽくしてあったりとか。祖父江慎さんですね、デザインは。
石川 さくら(ももこ)さんの「ちびまる子ちゃん」以外の本も大概祖父江さんだから、そういういたずら多いよね。
ガロ 吉田さんのはけっこう初期から読んでました?
石川 うん、そんな真面目な読者じゃなかったかも知れないけど。
知久 好きは好きでしたよ。
石川 本来あのへんは「ガロ」でしか見られなかったはずなのに、メジャーで始まったというのはありますよね。
ガロ ガロ側から言うと、「伝染るんです」以降、やっぱり「あ、こういうのもメジャーでありなんだ」という感じでどんどんガロに来るはずの(?)才能がメジャーに向き出したのはありますね(笑)。間口を広げたというか。今はもうメジャー漫画誌で「ええっ、こんな漫画いいわけ?」なんてガロの編集してる僕らが驚くような漫画が載ってるのが普通ですから、なんとなく複雑ですが…。
滝本 でも吉田さんの後、似たようなのがけっこう出たでしょ。でも全部面白くないね。
ガロ 「伝染るんです」もどきの4コマもあちこちでガーッと出ましたからねぇ、いわゆるパクりが。
石川 同じ系統だとやっぱりセンスがないとキツいよ。
ガロ 一番見てられないのは、それまでもうごく普通の、「起承転結」みたいな4コマ描いてた人が、たぶん編集から「『伝染るんです』みたいなの描いてよ」って言われて無理して、破綻するタイプ(笑)。
石川 あるね(笑)。でもよく4コマ漫画だけの雑誌あるけど、面白いのって少ないね。誰でも描けるんじゃないの、ってのまで載ってるし。最近はわかんないけど、昔読んでたら笑えるのが一個もないんだもん。
ガロ さて吉田さんの話が出たところで。
石川 出てきましたな、偶然にも(笑)。
ガロ ニューアルバムが。
石川 そうなんです。次のアルバムは、吉田戦車さんの「ぷりぷり県」という漫画をモチーフにした作品なんでございます。
ガロ その経緯というのは。
石川 今話してたように、吉田さんの漫画を皆面白いな、と読んでたんですよね。そしたら知り合いの人で、漫画家の草野球チームで戦車さんと同じだという人がいて。その人がライブに二回ぐらい連れてきてくれて、話したりはしたんです。で、その後何年か会ってなくて、去年の暮れグローブ座でライブやった時に、さくらさんが戦車さん連れてきてくれて。
知久 打ち上げの時ね。
石川 「ぷりぷり県」の話が出て。さっきの「サイクル野郎」からの流れで、俺けっこうそういう旅とか他県の県民性みたいな、「県」とか好きで、そういうのを題材にした「ぷりぷり県」がすっごい面白くてね。で打ち上げの時、別々の席にいたんだけど、戦車さんのとこ行って、「戦車さん、『ぷりぷり県』は最高に面白いと思います!」つって。それから今年になって、次のアルバムどうしよう、という話を皆でしてる時に。
ガロ アイディアが。
石川 うん…今まではわりとライブやってって、新曲が出来ていったらそれをアルバムにして…という感じだったんだけど、もうメジャーデビューして8枚目のアルバムだし、何かテーマを見つけて作るのもいいじゃないか、という話をしてる時に、そうだ、あの「ぷりぷり県」をモチーフに曲作ったら面白いんじゃないか、と。
知久 今年は人との競作をやろう、と去年あたり言ってたんだよね。ミュージシャン相手のつもりで。でもミュージシャンじゃなくてもいいじゃないか、という。
ガロ 異種格闘技というか、コラボレーションですね。
知久 戦車さんがやっていい、と言ってくれるなら大喜びだよ、という感じで。そしたらいい返事を貰えて。
石川 で、作りました。曲は全部書き下ろしで。今までは新曲出来てライブでどんどん形作ってってそれをアルバムに…という感じだったけど、今回はライブでやる前から曲作ってたんで、ライブで再現できないような事も「やっちゃえ!」って感じで。だから俺たちには珍しいシンセサイザーなんかも使ったりしてます。
知久 つまり、まぁ一般的な事に近づいたというね。
ガロ 何かビートルズの後期のようですね(笑)。
滝本 …後期か(笑)。
ガロ あいや、その(笑)中期かな。ライブをやらなくなってから、というか。あ、やらないわけじゃないか(笑)。
滝本 でもね、「こりゃあ面白そうだ」と思って始めたけど、取り掛かってみるとけっこう大変でしたよ。じゃあ一体どういう曲作ればいいんだ、という。
石川 どこまで勝手にやっちゃっていいんだろうか、人の漫画だし、っていうね。でもそしたら戦車さんが、「たまの『ぷりぷり県』をやってくれていいから」って言ってくれて。漫画の「ぷりぷり県は出てこなくてもいい」ってね。それでまた世界が広がったというかね。必ずしも漫画に出てきた事だけを歌いこまなくてもいいんだ、って。
ガロ 吉田さんの方から、今回のアルバムに対して何かして頂いたことはあるんですか?
知久 あ、書き下ろしの詩をいっぱいもらいました。
石川 まだ曲がついてないのもあるんですけどね。それは、8月のイベントまでに出来ればつけたいと思ってます。あと、たまたま戦車さんがレコーディング見に来てくれたんで、ちょっとコーラスというか、掛け声で参加して貰ったりしました。
ガロ 「あっけにとられたときのうた」でさくらさんが笑い声で参加したような。
知久 そうそうそう。そういう感じ。
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↑収録のあと、板橋区の「清竜丸」で
頼まれた色紙。 知久筆のまる子が!!
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ガロ コラボレーションのようなことはこれからもけっこうやって行く予定ですか?
知久 せっかくメジャーから出させてもらってくんだから、一こ一こ、今回はこういうのが面白いんじゃないかな、ということをやって行きたいですね。もうさんざん当たり前の事はやってきちゃったから。今回もやってて本当、面白かったからね。やり慣れてない事は面白いね。大変だけど。
ガロ 面白ければやる、と。基本ですね。
石川 そうそう。それしか出来ないから。
知久 僕の歌詞に自分で曲をつけるとか、自分で唄を作るとどうしても言葉のテンポとかあって、のろい曲になっちゃうのね、テンポ感がないというか。自分でも困ったもんだな、と少しは思ってたんだけど、今回は戦車さんの「ぷりぷり県」!というのがあったから、二曲やってるんだけど、多少僕の中ではテンポ感がありますから。そういうのが作れて、まだ俺にはこういうのが作れるんだ、という。まだ俺もやれるんだな、と。
ガロ そんな(笑)。
知久 そんな思いを、戦車さんが僕に与えてくれました。ありがとう、戦車さん!
ガロ 完結してどうするんですか(笑)。終わっちゃったよ。
石川 あの、今回は漫画がモチーフっていうのがあるから、楽しい感じの曲が多いかな。
ガロ ジャケットの撮影もこないだで終わったんですよね。
知久 そう。南砂の商店街で撮りました。僕らが「ぷりぷり県」に迷い込んだという設定で。
石川 床屋とか食堂とか使ってね。いい感じの商店街だった。
ガロ では最後に一言、今回のアルバムの聞き所などを。
滝本 …考えとかなきゃな、そういうの(笑)。今回は…、全8曲、リズミカルで…BGMにもなるかもね(笑)。これから夏に向けてですね、「かわいい流れ蛸」という曲がありますんで、これに振り付けをつけてですね。もう家の妻と子は振り付けて踊ってますから。これは盆踊りでぜひ。
石川 昔のレコードみたいにさ、こっち側に振り付けの絵か何かつけて(笑)。
滝本 そういう事でも楽しめる、ね。
石川 えー、あとはライブで再現できないような音を重ねちゃってるんで、CDでしか聞けない面白さもあると思うんで。今回は、CDを買って下さい。
知久 今回からは(笑)。…あと僕は石川さんができないパーカッションを今回担当しました(一同笑)。
石川 正当な刻みを(笑)。でもね、ジュースの空缶とライターとか、豚の貯金箱とかですね。
知久 そう、貯金箱とか箒の掃く音なんかが案外格好いい曲で使われてたりして。そういうところが…聞いてもわからないかもしれないけど、自分では面白いと思いますよ。
石川 あとね、聞き所あった。あのね、たまを見た事がある人は解ると思いますが、僕や知久君が語るところはよくあるんですけど、今回はGさんが一部で。
知久 そうそう。ビヤホールのウェイターとして喋ってるところがある。
石川 そこがドキリとします。
ガロ ドキリ、と(笑)。
知久 あとサポートの斎藤君のアドリブのキーボードが、ことごとく冴えてます。
ガロ じゃあストーリー性と、細かいサウンドと、全てに聞き所がある、と。
知久 そうですね。で全体としては、わざと音を悪めにしてあります。
石川 70年代初頭のロックバンドみたいなサウンドにね。
ガロ この前のアルバムも「プログレ宣言」がありましたが(笑)。
一同 そうそう(笑)。
滝本 「どこがじゃ〜!」というか(笑)。
知久 年相応なだけなんだよね。
石川 あんまりプログレじゃなかったね(笑)。
知久 音の感じは今までと違うと思うんだよな。
石川 僕らはね。でも聞いた人はいつもと同じか、と思うかも知れないけど。
滝本 ある意味では、今風の音かも知れないね。僕らの世代が今世の中を牛耳ってて、何ていうのかな、昔聞いた曲や音を何でも今持ってきているという状況が出来上がっちゃってるから。
石川 逆に言うと、たまの「ドン底ディープもの」が好きな人は次回作を聞いて下さい(笑)。別にそっち方面をやめたわけじゃなくて、今回はこういうコンセプトがあるということで。
知久 こんなコンセプトでもない限りこのまま忘れ去ってしまうような世界だったからね。
石川 たまの、どっちかというと「チープばかばかしさ」が好きな人はいいんじゃないですかね。
知久 より「チープばかばかしさ」方面に進みたいですねぇ。
ガロ てなわけで皆さん、ニューアルバム『パルテノン銀座通り』、お楽しみに!
★収録…1997年6月10日/初台にて
★聞き手…白取千夏雄(DG編集長)★写真…白取&S.L.J.★文責…編集部